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テーマを絞った加古川 税理士

貸出金の目標化については、住友に追随して第一勧銀に導入されるとき、役員に向かって私は抵抗したんですよ。
貸出金は需要があってこそ、あるいは需要を掘り起こしてこそ発生するものなのに、最初から貸出金の〝数字ありき〟で走らせるのはおかしいじゃないかと。
今でも忘れられませんけど、役員は支店長の貸出権限なんかもう撤廃しろと言ったんです。
ある支店長なんか「貸したいというだけ貸せばいいじゃないか」と、そんな暴論を吐きました。
第一勧銀は木偶の坊と呼ばれるくらいだから、非常に保守的な融資姿勢を守っていた。
ところが、それでは成績が伸びなくて、住友銀行や富士銀行(当時)から煽られる形になっていった。
役員はお尻に火がついてたんでしょうね。
「他行比較」というのがあって、地域ごとの競合店の貸出金がコンピュータで出るんですね。
すると、融資内容は関係なしに、一目瞭然に数字の成績がわかるんですよ。
第一勧銀のこの店は全然成績が伸びていないのに、隣の住友の店は倍々ゲームで伸びてるとかね。
地域の支店間の数字比較が業績評価のベースになっていった。
各行ともデータを互いに交換してるから、数字は全部本部に上げられる。
支店長はそれを見せられて、「隣の住友や富士はこんなに伸ばしてるのに、お前は何やってるんだ」と絞られる。
それでも「こんな融資はやっちゃいけない」と考える、ある意味で保守的な支店長は数字を上げることができず、結局、更迭されていきました。
でも結局、そういう融資は後からみんな焦げつくものばかりなんです。
ほとんどが不良債権になっていく。
支店時代の江上さんのお話を伺うと、以前は企業サイドにきちんとした目的や計画がなければ融資は出来なかった、ということに他なりませんね。
そもそも「好きに使っていい融資」なんてない。
ところが、バブルの頃になると、銀行が相手の金の使い道まで無理矢理考えて融資するという、そういう時代に入っていったんですね。
やはりFS(富士・住友)戦争の影響、余波は大きかったですね。
住友銀行は平和相互の吸収(八六年十月)で一挙に百三店舗増やしたんですね。
当時、第一勧銀が全国で三百五十店くらい。
それに対して首都圏だけで住友銀行が百三店舗というのは、凄まじいインパクトでした。
それを「関東圏の雄」という自負を持つ富士銀行が迎え撃つというので、大戦争が始まった。
第一勧銀もついて行くしかなくなったわけですね。
後から聞くと、当時はとにかく転がし融資が多かった。
土地を買って短期譲渡して、また融資して一週間で大儲けするような、そんな融資ばかりでした。
でも、それが支店長から褒められたりするわけです。
後から反省を込めて当時の棄議書を見ると、中身なんか何もなくて、右から左の不動産融資ばかり。
そんな貸出金がどんどん増えていきました。
私は結局、貸出金の計画を立てるか立てないか悩んだんですが、長期貸出金の計画は目標にしました。
住友銀行が「収益三冠王」を取ったのも、この頃ですね。
住友的手法がベストだと、みんなが流れていった時代です。
これだけを取り上げると、住友銀行がバブルを作ったかのように聞こえるかもしれませんが、住友の真似をする他行が悪いのです。
住友銀行はなんでも最初にビジネスモデルを考える。
すごいことです。
住宅ローンひとつ取っても、銀行の営業マンが登記簿謄本をとって、高い金利でお金を借りてる人たちに軒並み攻勢をかけて全部確定金利で肩代わりするとかですね。
第一勧銀なんか、誰もそんなこと考えなかった。
「○○業界が今後伸びる」というレポートが調査部から出されると、銀行の営業マンから審査部までが取り組みを強化し、その業種に集中して融資をするとか、住友銀行はそういうこともやったわけですよ。
すると、私たちは、それを無批判に真似した。
でも、真似しただけ。
情けなかったな、そういう意味では。
大蔵省にも、検査のたびに言われました。
「住友銀行はこんなことをやってるのに、第一勧銀はどうしてやらないんだ。
お前ら、ホントにダメだ」と。
さすがに腹が立ちましたよ。
でも、第一勧銀は表向きは預金量、貸出金もトップを維持していたことになっていますが、実際は住友と富士に追い抜かれていたのかも知れませんね。
その意味では、大蔵省もバブルを膨らますのに一役買ったわけですね。
江上一役も二役もね。
検査で各行を調べる大蔵省と日銀が、「あっちの銀行では、こんなことやって儲けてるよ。
収益上げてるよ」とアドバイスして回るんだから、どんどん加速していきます。
各行の目標もどんどん過大になっていく。
当時は審査部まで営業推進部隊の中に組み込まれるという重大な組織改編がされたために、第三者として融資を審査するということができなくなったんです。
銀行全体がノーチェック体制に雪崩れ込んでいったわけですね。
呆れたケースでは、「私が支店長なんだから問題ない」といって、審査部の意見を無視して案件を押し通したりした。
そんなのはみんな焦げついてますよ。
でも、これは第一勧銀だけじゃないし、先行した住友銀行が悪いわけでもなく、ほとんどの銀行が流されていった。
日銀の貸出枠が廃止になり、内需拡大の国是の下で自主規制になって、とにかく「何が何でも貸し出せ」と、そういう時代になっていったんですね。
本店に勤務する里親封封酎㌣別封酎六行の担当者で集まっては口角泡を飛ばして議論し、時には尾登雑音を投げ合い、最後は談合で結論を出し、懸案が片づけだったのでドンチャン騒ぎをする。
一回目の選別ところで、昇格するかしないかの最初の分かれ目は入行何年してからのことですか。
まる七年経った、八四年のことで、主事に昇格する者とそうでない者にわかれます。
これが入行してから最初の分け、第一選抜と呼ばれるものです。
入行から七年の間に、いわゆるエリート街道を歩んでいるのは留学経験があったり、組合活動をやったりした者で、その手のキャリアを積んだ者が同期にけっこういた。
私のように営業店の経験しかない者は、むしろ少数派でした。
昇格できるのは同期の百人中十数人ぐらいだと聞いていたから、そうしたキャリア組を勘定するとそれだけで定員一杯になりそうな気がした。
須田一国目の選抜で、その後の銀行員人生が大きく分かれるわけですね。
江上さんも、昇格できるかどうか不安で堪らなかったんですか。
そう、昇格日(四月一日)は憂鬱でした。
その日は日曜日で、結果は翌日にならないとわからない。
当時、三軒茶屋の社宅に住んでいたんだけど、風景としてベビータンスの前で膝を抱えてぼんやりと座っていた自分を思い出すんですね。
ただ、有り難かったのは、前日の土曜日、芝支店の上司が食事に連れて行ってくれて、こう言ってくれたんです。
「お前が昇格しないようなことがあったら、俺は銀行を辞めてやる」。
この上司とは、後にいわゆる「四人組」として一緒にやることになるんですが、最初の出会いは二十代の芝支店時代にあったんです。
ともかく、翌日の月曜日、出社すると支店長に呼ばれ「おめでとう」と祝福された。
営業店に在籍しているなかから昇格したのは私ぐらいなものでした。
やっぱり昇格はうれしかったですか。
それは嬉しかった。
逆に上司からは「あまりはしゃぎ過ぎるな」と注意されたくらいです。
昇格で何が変わりましたか。
何と言っても月給ですね。
主事になった途端に、当時で月給が十万円も跳ね上がるんです。
年収にすれば百二十万円、加えてボーナスに月給の増加分が反映されるからアップ率は大変なものでした。
三十歳のときに年収が一千万円を超えました。
銀行は初任給は多少安いけど、その後は急カーブを描いて民間トップの給与体系になるんですね。

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